2009年5月24日日曜日

スツール6脚 完成/Turnig wood Lathe


大阪市大正区にできた居酒屋のスツール6脚を作った。
カウンターが930ミリなのでスツールはマイナス300ミリの630ミリ高、
少し高いめなので座面を厚くして足をしっかりさし込み、つなぎも太くした。
このタイプのスツールは旋盤を使用して作ります。

木工旋盤 (Lathe) 覚えるのは見るのが一番。
今回は旋盤の製作過程を映像でお見せ致します興味ある箇所はポーズで見て下さい。

この機械は刃物が回っているのではないのでそんなに危険な機械では有りません。
回転軸の部分は#2テイパーで円錐形の物が挿してあるので
ひっかかたり負荷が重いとスリップかモーターが止まります。

木工旋盤 (Latheレイズ) 使用状の注意点:

刃物磨ぎの仕上げはコットンウィールとトリポリでバフを掛けます。
丸棒を旋盤に掛けるときは小口の中心点を出す為に角棒の対角線に切り目を入れます。
回転する材料とノミを乗せるツールレストの間隔を狭める。
刃は少し上げ目に当てる、角度は材木の堅さにも寄るが切れの感覚の良い所
仕上がり近くなるとノミはゆっくり当てる、急に当てるとチップします。

使用している木工旋盤は Powermatic model 90 、最長900mmでスピード返還式です。
廃盤式ですが人気のモデル、中古なのでアメリカでは10万以下で購入出来ます。


2009年5月20日水曜日

Handrail 完成


建築設計事務所からの仕事でポーチのハンドレールを取り付けた。
午前中に工場で材料を刻んでおき午後からステインを塗りながら取り付ける。

設計事務所からの仕事は本当にありがたい、これからも宜しくお願い致します。

2009年5月18日月曜日

曽根崎 岬 スツール12脚 完成





大阪曽根崎のお初天神を出た所に呑みや横町がある。
以前その地域に出来た Bar Inspaire のカウンターとスツールを作り
そこのマスターからの紹介で「岬」のスツールを作る事になった。

ゴールデンウィーク前に話を聞き、14日がオープンと言うからかなりタイトな話
結局14日のオープニングには間に合わなかったが15日の営業中に運べた。

「椅子が来たぞー」と大にぎわいでお客さんもゾロゾロと椅子を取りに行く始末。
幸い初日は立ち飲みでも一杯の状態だったらしくタイミング的には間に合った。
しかし4日間で作り終え、最後の日は間に合わせようと朝六時から翌朝6時まで
24時間働いて超ラッシュで作りあげた椅子なのです。

12脚椅子を作ると言う事は、例えば足が4本掛ける12脚で48本必要になる。
一本の足に製材から取り付けまで5種類のカットと2工程の鉋やサンディングをする
4面だと28回の切り込みが有り、足48本だと1344回切り込んだ事になる。
ミソやホゾや厚みなどに合わせて機械をセットする事になり
この椅子で12脚作るまでには数千回以上の切り込みの作業をした事になる。
通常なら6日かかる仕事を塗装込み一人で4日で仕上げるのは至難の業だと思います。


椅子に関しては居酒屋の椅子、女の子の経営する店、会社員のお客さん
820高のカウンターなどを考慮に入れて、

座面は幅400とゆっくり座れ、座高565ミリの足置き付き
背もたれは300高で背中とお尻のあたりが良い様に角度と曲線を持たせている。

低予算と言う事も有り材料は有り物を使わせてもらったのでバラバラの木で出来ている。
座面はアフリカ材のダオ、背もたれはケヤキ、足は柾目の針葉樹、つなぎはレッドオーク
などを使用した為仕上には濃いめに、赤、黄色、青の染料を調合して飴色を作り
速乾性のある2液製のウレタンに混ぜて吹き着けでサンバーストに濃淡を付けた。
プロポーションより座り心地を優先して作りました。

ゆっくり足を載せて座ったはるでしょ、また宜しくお願い致します。

2009年5月12日火曜日

Bentwood / Michael Thonet



" The father of  bentwood furniture"

デッキの仕事で伺ったお宅の玄関に少し変り果てたトーネットの椅子が有った。
オリジナルは座面がCaine net製でシャレではないが「籘ネット」だった物が
100年近く使用されているうちに革製に変えられていた。

私のお宝本の中に1980年代の初期のFine woodworkerにトーネッット特集が有り
その中からこの椅子の製作過程が載っているので少しここで記載します。

Thonet's chair in production

1796年ドイツ生まれののトーネットは23歳でキャビネット工房を開き
1830年に家具を作り始め伝統的なビーダーマイヤー・スタイルから
独自の曲げ木を特徴としたボパード・チェアーを作り始める。

当初の曲げ木は薄い板を糊の釜に付け張り合わせて作るラミネーット式の物で
製作に時間と費用が嵩み1840年工房が倒産する。

その後もキャビネット工房に勤め家具製作を続けた末に晩年、現在のチェコスロバキアの
Koritshanに1856年、彼のこだわって来た曲げ木の家具が完成する。

スチームの曲げ木に適しているBeech(ブナ)の原生林に隣接した所に工場を造り
電気のないこの時代に蒸気の動力で機械を動かし、そして曲げ木にも利用していた。

彼の人生をもって辿り着いた曲げ木の工法はこうだ。

天日干しした製材前の材木を含水率20%まで乾燥さし(少し湿度のある状態)
真直ぐの木目の物を使用し、約三センチの丸棒に製材する
端材は細くして背の部分に使用する。

製材された丸棒を一晩、水のタンクに浸けておき
材木の外の含水率を30〜40%まで湿らす、心部はまだ20%の状態。

蒸気釜のスチームボックスの状態を圧力5psi 、200F (93度) にセットしておく
部材の大きさに寄って釜に入れておく時間は異なるが
椅子の部材で10分から1時間、後ろ足の背もたれの長い部材で約30分で取り出す。

背もたれになる足の部材は約二メーター程にもなる、
釜から取り出し型にはめるまでの時間は二分以内しないと曲がらなくなる。

型にはめた部材をカートに乗せ人工乾燥室に一晩入れておく
120脚分の後ろ足をカートごと乾燥室に入れ、
含水率が8%に乾燥するまでには約16時間かかるという。

大変そうでは有るがこれは画期的な作り方で椅子の工業生産の上では
先駆的な工法でもある、#14の椅子は6つのパーツに分かれ
1立方メートルの中になんと36脚も入りノックダウン式で組み立てられる。

この椅子に影響を受けたデザイナーや椅子の作家は数知れず多い。

2009年5月11日月曜日

Extended deck / デッキ拡張 下請け工事




デッキの拡張工事、ツーバイフォーで作るのでお手の物です、
下請け工事は元請けさんのデザインと寸法などの指示を受け作業をする。
構造はこちらで強度が持つ様に考えるが用途や目的やデザインは
既にお客さんと話されているので元請けの会社の希望する様に仕上げる。

私の様な個人の大工でもある家具工房は設計事務所さんからの仕事がお得意先になる
何度か仕事を消化して行くと時間も短縮されお互いに利益確保が見えてくる。
アメリカでも個人の仕事以外は設計事務所などからの下請け業務が大半を占めていた。
こちらの会社は西洋建築風の物が多いので案を出し合って仕事を進めて行ける。
有り難うございます、これからも宜しくお願い致します。

この工事だと施工は一日で済むが消費した時間にすると材料の買い付と準備に一日
打ち合わせと図面や材料出しに一日費やしている事になる。

何度も買い物に行ったりしない為に製図、材料リストをしっかりしておき
施工時間を短縮する、元請けさんやお客さんは共に現場工事時間が少ない方が助かる。
大工としての経験が有るので最小限の作業時間で見積もる事が出来る。

下請け費用としては材料代プラス2〜3日の日当を見積もりの段階で出していた。

2009年5月10日日曜日

picture frame 完成


大型の額の注文が有り完成した、
最終的な額のサイズは約1500x700と大型。

刺繍の作品「最後の晩餐」を飾る額の依頼が有り
額のサイズや色やバランスを考え写真の様な作りに仕上げた。

ダヴィンチの最後の晩餐は漆喰にかかれたフレスコ画だが
この作品は刺繍である、素材の質感を引き立たせる為に刺繍の周りに
スプルースの糸柾でトリムを回り、額の色は作品の中の同色を使用した。

作品が主役、額は脇役と言う事では主役を引き立たせる事が出来たと思う。

2009年5月8日金曜日

Picture frame/額縁






額縁を作るのは簡単なようだが実は奥が深い、額縁屋という職業があるくらいだから。

そしてこの職業は木工作業の一つでもある、
四辺の額なら角が45度に切れてないと直角にならず継ぎ手が開いてしまう。
仮に切れていてもボンドを付けた後のクランプがしっかりしていないと
角がずれたり、外れやすくなってしまう。

先日、奈良県の大和西大寺と言う所に額縁の金具を買いに行くと
その地域には額縁屋がやたらと多かった、聞くと西大寺は奈良の洋画の発祥の地らしい。
額縁は本来洋画から来たもので様々な作り方はイタリヤ式などが手本になっている。


そこでここではこれさえ有れば額縁屋も出来るというお助けマンを紹介します。

Picture frame cutting machine 日本でも一般に使用されている木工機だと思いますが、
写真の機械はアメリカの知人のスタジオに有った物です。
機械は手動と言うか足動式で足のペダルを踏むと上から正直角の刃が
ギロチンの様に降りて来て額縁を切り落とします。これを使うと角がぴっちり決まる。

Strap clamp 額縁のミソはクランプにある。カッティングマシーンはなくても
押し切りで切れるが、クランプがしっかりしていないとフレームは出来ません。

そこでプロも使用していた小道具が ドイツのBESSEYが出す額縁用の
写真の角の部分が優れもので、はみ出したボンドも付かず角度自在式になっている
締め付けには専用ストラップが有るが細めのタイダウンでも締めることが出来る。

クランプは締め付けた後、対角線の長さを同じにすると直角になる。
クランプを外した後はフィニッシュネールやビス、裏から波釘などを打ち外れ止めをする。

Picture frame clamp の工夫いろいろ- YouTube







2009年5月1日金曜日

「蟹工船 」 美術応援




SABU監督の映画「蟹工船」が6月下旬より公開されるのを先駆け
先日梅田の東映試写室に製作スタッフとして試写を拝見する事が出来た。

この作品には、友達である美術監督の磯見俊裕さんのお誘いで去年の12月に
栃木県へ美術応援の造作大工として参加させてもらった。

作業現場はセットの設営場所である倉庫とスタッフの宿舎であるマンションが隣り合わせで
それはそれは短期間の設営をする私達がまさに蟹工船の雑夫状態であった。

「CGで芝居の出来る役者は日本に居ない」と断言する磯見さんのセットは
役者が演技をするセットは基より現場の「場」作りから拘りが有る。

壮絶なパイプ配管で作られた蟹工船の船内はあり得ない様な構造ででパンクに仕上げられ
ドラム缶で出来たたタコ部屋は現代のカプセルホテルを捩り
大きな滑車を回し稼働する船内工場は一人休めば連動しなくなる強制労働を現していた。

大工の仕事も色々有り美術大工の装置が今回の仕事。
作業中はよく写真のSABU監督が来られ、作った物をスケッチされていた
きっと気に入ってもらえてたのだと思う。

私が担当した物はこれらです。

通路、宮口が自殺をするトイレ、ボイラー室の配管、ゆでたカニを載せる台
ベルトコンベアーにカニの身と缶を載せるシステム、
タコ部屋の暖を取るボイラー、無電室の配線、役員室の配線とカーペット、額縁,金庫代、
甲板のハッチとドア、甲板のリベット、ロシア船のバックパネル

塗装部さんが居るので下地までですが、一部家具は塗装も引き受けた。
大まかな指示は有るがお任せで作業出来るのでなかなか面白かった。

関西出身であるSABU監督の蟹工船は小説を忠実に表現しているのではなく
主人公である新庄(松田龍平)の独特な雰囲気を引き出し船員の雑夫達の心に詰め寄る、
そして回想シーンでは監督ならではの演出でお笑いもしっかり含まれていた。

25席しかない試写室には補助席も増やし満杯の状態
メディア向けの試写とも有り新聞、雑誌、評論家等のメディア関係者達が集まる中
ピンクのジャケットで最初に入場されたのは「ありがとう」の浜村淳さんだった
「持った刀をバッタと落とし小膝たたいて・・・・」の名調子で評論が楽しみだ。