2010年9月26日日曜日

木の仕事展’10/DM 表紙作製/Wood Sign V-Groove




今年は「木の仕事展」の展覧会のDMのデザインを担当することになった。
木の仕事の会には去年より豊川さんの紹介で入会し、秋の展覧会はこれで二度目になる。

帰国してから何度か木工家が主催するのグループ展のチラシを目にしていたが
その多くがコンピュータグラフィックで写真を駆使したり、
遠目に作品を奇麗に見せた物などが多かった。

今回、機会があって自分がデザインすることになり今までに無い物を作りたいと思い。
僕からのメッセージと意気込みを表現した。


『磨いでますか〜!』

『刃物が磨げれば何でも出来る!』







今回のチラシのデザインは同時開催のウッドサイン展を兼ねてウッドサインで作りました。
参考までにこのDMのウッドサインの作り方を説明いたします。

使用した材料はケヤキ、ちょっと無理をしましたが良い結果が出たと思っています。
まず文字とレイアウトをコンピュータでチラシの大きさの比率で作り
そして材料から木目などを見て彫る広さを決めました。

彫る範囲を約50センチ角の大きさにして実寸でプリントアウト、A4の用紙6枚分。
そしてスプレー糊でそのプリントをケヤキに貼付けます。

V−GROOVE / ヴイグルーヴ

基本的な彫り方の一つです。西洋では文字などによく使われますが
日本でもお寺の梁などに彫られている模様もこの方法が用いられています。
直線、曲線、文字、模様に利用出来ます。

1.太さのある文字を書く、今回はプリントを貼りました。

2.その文字の中央に線を書いて行きます、太い所、細い所全てにです。

3.末端の角は角から内側へ45度に線を引きます。(上写真参照)

4.まず中央の線の所にノミを真直ぐ下に下ろし筋を付けて行きます。

5.次にその中央の筋に向かいV字にノミを入れて行きます。

6.V字に彫る時は全て同じ角度で彫ると太い細いの所のつながりの辻褄が合います。

7.一通り彫るとまた中央線にノミを入れ文字のアウトラインまで掘り下げます。

(注意:最初から希望するアウトラインを彫らないこと、中から掘り最後に
薄くアウトラインを手彫りする程度で仕上げます。)


必用なノミ:平の大中小極小、内丸と外丸の大中小、Vの彫刻刀。

内丸と外丸はどちらか有れば何とかなります。

上の写真のは別の時にDの文字を彫った時に撮った物です、Vの彫刻刀で仕上げる。


1.

2.

3.

4.

Wood Signs にはトリムを付けました。

1の写真の様にアウトラインより少し外にノミを入れて行きます。

2の写真では一回りした後アウトラインにそってノミを入れています。

3彫りの仕上がり 4色を付けて平面なのでサンディングすれば完成です。



スプレー糊で付けた紙はヒートガンが有ると糊を暖め簡単に捲れます。




木の仕事展’10

会期:11月12日(金)〜14日(日)9:30〜17:00

キャラリートーク 14日(日)10:30〜12:00

会場:大阪市立クラフトパーク URL 

547−0012 大阪市平野区長吉六反1−8−44






2010年9月23日木曜日

”Truss” トラス補強 / 尺目の寸法読み


朝7時に集合、一時間以上かけて現場に行き8時半にヘルメット冠って朝礼。
10時に三十分、12時に一時間、3時に三十分の休憩があり、五時過ぎに終了。
規則正しい生活が続いている。

建物の構造は6寸角180角の材料を金物とボルトで結合する
西洋建築の工法で作られていた。

現在の仕事は天井の梁を支える約1:2の大型のトラスの補強工事。
六寸角のヒノキでトラス内を補強しその上に針葉樹合板を指定通りに釘で止める。

65の釘を30〜50ミリの間隔で止める工法はアメリカの建築物でよくやった。
耐震壁を作る時の釘のピッチがこんな感じだった。
ちなみに耐震壁は Shear wall (シアーウォ−ル)と言い
釘の指定を Nailng schedule(ネイリング・スケジュール)と言っていた。

アメリカの検査の基準はそれはそれは厳しいものだった。
検査の事をインスペクションと言い、検査官をインスペクターと言う。
建築関係の検査官はビルディング・インスペクターと言う。

構造検査(フレーミング・インスペクション)
釘検査(ネイリング・インスペクション)
など段階経てで検査官がカードにサインして行く。
サインが無くては次の行程に進めないのだ。

例えばネイリング・インスペクションでは一カ所でも間隔の広い所が有れば
カードにサインをせずにインスペクターは帰ってしまうという事になる。
石膏ボードのビスも紙を破るとやり直しという事になる。

プラスターの下地のラスなんかも触って震える箇所が有るとサインしてくれない。
など色々と検査でものすごく大変だった事を思い出す。



今回の仕事で大変身に付いて来ている事が有る。
それは尺貫法を用いて職人さんと仕事をしている事だ。

インチ、フィートは目検討も効くぐらいだが、尺寸分厘はどうも慣れていなかった。
それがこの現場でかなり身に付いて来ている。

目盛りを読むという事は目盛りが言えなくては身に付かない。
独学で尺目を使っているだけでは目盛りの読み方も自分流になる。

例えば尺二寸五分と言うと一尺を尺だけ言う事にしている。
これらの呼び方は尺目を実際に使っている職人と仕事をしないと耳に付かないのだ。

アメリカでもそうだった。
日本から来た大工がフィートに慣れようとするがなかなか慣れない
日本人同士だけで働いていると3/4を四分の三とか言ってやっている。

3/4はスリークォーター、1/4をクォーター
1/8をエイス、1/16をスィックスティーンスと言う。
3/32をスリー・サーティーセカンスなんて言えると一人前だ。

フィートも尺目も人間の大きさから生まれた寸法である。
仕事帰りの車の中で大工同士の会話を聞くと...

「あいつは立ったら五寸有るらしいぞ」五寸と言うと一尺の半分だ
「いやーあの組のあいつは六寸有るらしいぞ」
「えっ!六寸言うたら180や...それはゴッツイなー」

昨今、こんな感じです。






2010年9月13日月曜日

大工応援/奈良県文化財/橿原神宮前駅の耐震工事








宮大工の棟梁から「ウチの仕事手伝いに来ないか?」と言われ、手伝うことになった。

仕事の内容は、近鉄の橿原神宮前駅 の耐震工事の応援だった。
この駅は奈良県の文化財に指定されており木造の作りを保存する目的で補強される。

調べてみると、築70年、1940年に野村藤吾と言う建築家が建てた物だ。
野村藤吾は当時の建築批評では東の丹下健三、西の野村藤吾と比較された人物である。
90歳を超えても造作意欲は落ちず、死の前日まで仕事をしていた事は伝説になった。
有名な作品は大阪の新歌舞伎座 など数多く有る。

遠目に切り妻の大きな屋根を見ると、京大の西部講堂を思い出してしまう。
こちらの方がガッチリした作りのようだが明日よりこの切り妻の中に入る。

久々に骨のある大工さんと一緒に仕事が出来て嬉しいし。
日本の在来建築は以前から勉強したかったのでいろいろと教えてもらおう。

3日程働いて棟梁に日当の話をした
「後の喧嘩は初めにする」これが職人の日当の話らしい。
一人前の職人で扱ってもらえた、引き続き来てくれという事になった。