奈良県の興福寺、あの阿修羅像のお膝元に伝統建築群地域「ならまち」が有る。
丁度去年の今頃、淀屋と言う呉服屋さんを一部改装してカフェを作った。
当初は呉服のお客さんがカフェに寄ってくれれば言う感じだったが
あれから一年が経ち今はカフェのお客さんが主流と成った。
カフェのオーナーである息子さんから電話が有ったのも春の終わり頃だったが
お化け屋敷が終わるまでは手が付けられない状態で待ってもらっていたのだ。
僕に取ってこのならまちの店舗の仕事は奈良人との初めての仕事でもあり
ここのお客さんとの繋がりは直接、奈良人との印象に繋がっていた。
改装から一年が経ちこうしてまた仕事を頼んでくれるのは嬉しい事だが、
伝統的な呉服屋が一つ消えて新しくカフェが出来るのも時の流れとでも言うのか
寂しい感じがした。
お客さんの要望では格子があり木製の看板に英語で屋号の"Cherry's Spoon"
をあしらって欲しいとの事だった。
木製看板ウッド・サインは今年の秋のグループ展覧会に別企画で提案した事も有り
最近いつも頭に入れていた木工の仕事の一つではあった。
アメリカのウッドサインをそのままここに付けるのでは「ならまち」の雰囲気を
潰すのではないか。などを考えながら和の雰囲気を出来るだけ生かし
お客さんの要望も出来るだけ表現出来る様に自分なりにまとめた。
格子の作業は実はアメリカで嫌と言う程やって来た作業なのです
日本的な要望が多く外国から日本を見直し帰国しては観察して来た物なのです。
今回は格子戸の中に円形に木を埋めて丸を作りその中でウッドサインを掘った。
技術的にはルーターにスパイラルのフラッシュビットをつけてフリーハンドで
文字のあたりを縁取りした、スパイラルのビットは手ぶれが少ないので最適。
デザイン的にはアメリカのウッドサインの基本でもあるのですが
「枠の中からはみ出したオブジェクト」今回はカフェなので一目で分かる様に
コーヒーカップを表に飛び出させました。
そしてこの飛び出たオブジェクトには掘りと塗りで陰影を付けるのです。
そうする事に寄ってコーヒーカップを持ちたくなる様な気持ちにさせるのです。
カラーリングはならまちとコーヒーをイメージした16パターンの中から選んでもらい
どれを持って来てもこの街の中であまり出しゃばらない物にしていた。
今のお盆の時期はこの「ならまち」では夏の風物詩として燈花会(とうかえ)が行われる
町中に白く細長いカップの中に水を入れその中にロウソクを浮かべ
夕方に成ると町の人が共同で準備をして火を灯す。
出来上がったばかりの格子戸と看板を近所の人達が見て
「ええのんが出来たねぇ、デザインがすごく良い」と褒めてもらった。
僕にとて今回の仕事は「ならまち」を損ねず手仕事で今を表現しました。
近所の人に気に入ってもらえたのでほっとしました。
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