" The father of bentwood furniture"
デッキの仕事で伺ったお宅の玄関に少し変り果てたトーネットの椅子が有った。
オリジナルは座面がCaine net製でシャレではないが「籘ネット」だった物が
100年近く使用されているうちに革製に変えられていた。
私のお宝本の中に1980年代の初期のFine woodworkerにトーネッット特集が有り
その中からこの椅子の製作過程が載っているので少しここで記載します。
Thonet's chair in production
1796年ドイツ生まれののトーネットは23歳でキャビネット工房を開き
1830年に家具を作り始め伝統的なビーダーマイヤー・スタイルから
独自の曲げ木を特徴としたボパード・チェアーを作り始める。
当初の曲げ木は薄い板を糊の釜に付け張り合わせて作るラミネーット式の物で
製作に時間と費用が嵩み1840年工房が倒産する。
その後もキャビネット工房に勤め家具製作を続けた末に晩年、現在のチェコスロバキアの
Koritshanに1856年、彼のこだわって来た曲げ木の家具が完成する。
スチームの曲げ木に適しているBeech(ブナ)の原生林に隣接した所に工場を造り
電気のないこの時代に蒸気の動力で機械を動かし、そして曲げ木にも利用していた。
彼の人生をもって辿り着いた曲げ木の工法はこうだ。
天日干しした製材前の材木を含水率20%まで乾燥さし(少し湿度のある状態)
真直ぐの木目の物を使用し、約三センチの丸棒に製材する
端材は細くして背の部分に使用する。
製材された丸棒を一晩、水のタンクに浸けておき
材木の外の含水率を30〜40%まで湿らす、心部はまだ20%の状態。
蒸気釜のスチームボックスの状態を圧力5psi 、200F (93度) にセットしておく
部材の大きさに寄って釜に入れておく時間は異なるが
椅子の部材で10分から1時間、後ろ足の背もたれの長い部材で約30分で取り出す。
背もたれになる足の部材は約二メーター程にもなる、
釜から取り出し型にはめるまでの時間は二分以内しないと曲がらなくなる。
型にはめた部材をカートに乗せ人工乾燥室に一晩入れておく
120脚分の後ろ足をカートごと乾燥室に入れ、
含水率が8%に乾燥するまでには約16時間かかるという。
大変そうでは有るがこれは画期的な作り方で椅子の工業生産の上では
先駆的な工法でもある、#14の椅子は6つのパーツに分かれ
1立方メートルの中になんと36脚も入りノックダウン式で組み立てられる。
この椅子に影響を受けたデザイナーや椅子の作家は数知れず多い。
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